もくじ
『地下鉄道 自由への旅路』米国南部の農園から自由を求めて亡命する奴隷少女の旅路を描いた!
『ムーンライト』『ビール・ストリートの恋人たち』のバリー・ジェンキンスが監督を務める『地下鉄道 ~自由への旅路~』は、『ムーンライト』という映画で『ピュリツァー賞』を受賞したコルソン・ホワイトヘッドの小説『地下鉄道』をもとにしてドラマ化した作品です。
南北戦争以前のアメリカ南部で自由を求めて生きる少女コーラ・ランドルの物語を全10話。
製作はブラッド・ピットです。
物語の主人公は、米南部ジョージア州のプランテーション(大規模農園)で奴隷として働いているコーラ・ランドル(スソ・ムベドゥ)。
19世紀初頭、アメリカ・ジョージア州の農園で黒人奴隷として強制労働をさせられていた少女コーラ。
新入り奴隷の青年シーザーに、北部への亡命を持ちかけられる。
シーザーは、当時の奴隷には珍しく文字を読むことができ、それゆえに、様々な選択肢や可能性、そして、自分自身の価値を知ることができた。
シーザーがコーラに脱出を提案できたのも、文字が読めて教養があったからだろう。
シーザーによると、南部の黒人奴隷を運ぶ秘密の“地下鉄道”が実在するという。
そう聞くと、地面の下にトンネルがあって、地下鉄みたいにして鉄道が走ってるように思うが、そうではなくて、実際は奴隷が農場から逃げ出して、近くのあるところまで行くと、その場所の地下に隠し部屋があって、そこに一晩、匿ってもらう。
それを「Station(駅)」って呼ぶ。
そして、その後はまた1日、なんとか走って北に行くと、そこにある農家がり、その農家にも隠し部屋があって、屋根裏とかに一晩、匿ってもらう。
そういう形で、その「駅」と呼ばれてるところを転々と移動しながら北に向かって逃げていくというシステム。
そのネットワークが地下鉄道と呼ばれた。
それはなぜかというと、南部で黒人を逃すことというのは法律で固く禁じられていたから、スラングとして鉄道の話をするようなふりをする。
つまり、地下鉄道とは、当時北部の奴隷廃止論者によって結成された黒人奴隷の亡命を支援するための秘密組織。
この幻想的な地下鉄道はコルソン・ホワイトヘッドの原作本で創造された架空の乗り物で、実際には黒人達は、「駅(Station)」と呼ばれる「セーフハウス」を起点に夜間に安全なルート(線路)を歩いたり、荷車を利用したりして、次の停車駅「セーフハウス」に向かったということ。
この場合の“地下”は、“隠れた・秘密の”を意味する比喩表現だ。
しかし、コーラとシーザーを迎えにきたのは、本当に地下を走っている機関車だった。
奴隷狩りを生業とするリッジウェイに追われ、命がけで逃げるコーラとシーザー。
旅路の途中も、黒人奴隷制を巡って渦巻く人間の悪意と罠が二人を待ち受ける。
逃亡奴隷の少女の怯えた様が目を背けたくなるほどの迫真の演技。
とにかく暗い。
逃げた先で少し安心できたかと思うと、見つかる、人が殺される、家が燃える、捕まる、また逃げるの繰り返しで気がめいる。
しかし、辛いのはこれが現実にあったことで、未だに黒人に対する差別が沢山残っていることに繋がっているのを感じる。
列車自体はフィクションのようだが、「この国を知るには列車に乗れ」というように、彼女が見た人体実験や虐殺などは史実だというから恐ろしい。
酷いほどの黒人に対する差別の描写。
巨大地下鉄道ネットワークや空想科学都市的なSFの描写。
トンネルの中に、レールがあって、蒸気機関車が走ってくる・・・本当に地下鉄道があるSF的要素。
その地下鉄道で脱出したコーラは、サウスカロライナっていうところに行くのだが、そこは南部の街なのに、なぜか黒人が差別されてない。
みんなちゃんとした服を着て、教育を受けて、仕事をもらって、黒人が奴隷扱いされないで、白人からも尊厳を持って扱われてるっていう街。
そんな街は実は歴史上、実在していないが、この物語にはいきなりそういうところが出て、しかも高層ビルが建っていて、そこにエレベーターまである不思議な世界観。
さらに、昔のアメリカの美しい自然の景色に、これらが混じり合いながら、すさまじく強度の強い物語を紡いでいく。
毎回のエンディングに流れるエンディング曲が、またおそろしくかっこよく、同時に胸を締め付ける。
物語は南北戦争前のアメリカだが、エンディングの曲は現代のブラックミュージック。
すべての曲がかっこよく、同時に痛切に感じてくる。
奴隷制が絡むので見ていて辛くなるシーンがとても多い。
あんな風に人間扱いされていなかったら誇りや気力を失ってしまうのも無理はない。
実際に撮影時はキャストの精神的安定のためにセラピストが常駐していたという。
このドラマでメインに描かれるのは、必死に生き延びようとする少女が試練を乗り越えて変わっていく姿にじんわりと胸が熱くなっていくだろう。
大河的な物語と、異物のようにぶつかる曲が、根底に黒人の苦しみが通底していることに、胸をしめつけられる。
地下鉄道を目指してジョージアのプランテーションを脱走するコーラ・ランドル役に『Is’thunzi』というシリーズでエミー賞にもノミネートされた“スソ・ムベドゥ”。
コーラを追う賞金稼ぎ、黒人狩りのハンターの役として終始執拗に登場するキャラクターを、『ある少年の告白』など最近は監督&製作業でも活躍を見せる“ジョエル・エドガートン”が熱演している。
他にはドラマ『グッド・プレイス』の“ウィリアム・ジャクソン・ハーパー”、ドラマ『Krypton』の“アーロン・ピエール”、舞台劇で評価されている“シェイラ・アティム”など。
映画批評サイト「ロッテントマト」のTOMATO-METER(2023.01現在)
『地下鉄道 自由への旅路』に関連する動画
Amazon Original作品『地下鉄道〜自由への旅路〜』ティザートレーラー - YouTube (出典 Youtube) |
Amazon Original『地下鉄道 〜自由への旅路〜』|フルトレーラー - YouTube (出典 Youtube) |
『地下鉄道 自由への旅路』についてTwitterの反応
ジャージーニウニウ
@Mo_Moo_Mooo己の特権を自覚した際、自分は選ばれし者なのだと優越感に浸るのか、たまたま自分はこっち側でいれただけなのだと向こう側に自身をみるのかで、世の捉え方が大きく違ってくるのだろうなと思う。Amazon Original『地下鉄道 ~自… https://t.co/5EjhuNxgY6
ジャージーニウニウ
@Mo_Moo_MoooAmazon Original『地下鉄道 ~自由への旅路~』|フルトレーラー https://t.co/y9QD2fJPJt @YouTubeより